[書評]【戦争遺跡(写真集)中谷航太郎】この国の残る、70年前の戦争遺跡。圧巻のフレーミングで「静」を切り取る。

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戦争体験のない、幸せな世代の @tangerineです。

国内の残る戦争の遺跡。旧軍の遺構です。
かつて、この国は戦争をしていた。それも、国力のすべてを投じた全面戦争です。

国力とは、民が生み出したカネ・モノや文化、そして命そのものを指します。
戦争を考えるきっかけになる写真集です。



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傷つけたくないし、傷つきたくない

68年前、広島と長崎に核兵器が投下された。
それまで、この国は戦争に明け暮れていた。

20世紀という時代の趨勢の中、国家という制度は戦争に突き進んだ。
ヒト・モノ・カネと言ったら軽い表現だが、国家にあるすべてを戦争に投じた。
まさに命そのものを。記憶、感情、歴史、文化・風土すべてを投げ打った。

ボクは、戦争は経験していない。
戦争なんて経験したくない。
自分が傷つきたくないし、親しい人も家族も傷ついて欲しくない。
そして、人を傷つけたくない。
そのためには知る必要がある。かつての戦争を。

本を読み、ばあちゃんの話を聞き、靖国神社に行き、戦争遺跡を見た。
沖縄、広島、長崎、知覧、松代、大津島と足を運んだ。

それは「戦争反対!」というシュプレヒコールを上げる運動でもなければ、
「あの戦争は正しかった!」という過去肯定の運動でもない。
ただ、自分の考えを整理するために。

特攻兵器「回天」基地の戦跡

上の写真は海軍特攻兵器「回天」の基地跡。
山口県の大津島にある。

魚雷に人を乗せてコントロールしようとした兵器。
そんな兵器を考え出す状況は、もはや思考が止まっている状況に近い。

遺書などを展示している記念館の館長は、
古着を着てボストンバッグを担いで展示品を眺めるボクに話しかけてくれた。

当時のボクは「八紘一宇」の意味すら知らなかった。

「遺書にね、壮大なこと書いてるでしょ。えらいよね。本音は書かないよね」

ゼミの合宿の学生でもなく、親族が大津島の基地にかかわるお年寄りでもなく、
右寄りの団体でもなく、変な旅風情の若者がいたので館長も気になったのかもしれない。

話した内容は、ほぼ忘れてしまった。
それだけ、経過した時間が平和だったことだ。

「静」の写真

戦跡は「静」の写真。
戦時中のエネルギー、つまり「動」が切り取られ、放置され、時間が経ち「静」となったもの。

切り取られた「静」の戦跡は必要以上に暗くなく、それは、情景に溶け込んでいる。
時間の経過がなせることか。

戦争を知るアプローチはいろいろある。
戦跡という側面から俯瞰するのに、この写真集をおススメする。

ページいっぱいの圧巻の写真が多数掲載されている。

70年前、そこには兵士がいた。
70年前、この国は、まぎれもなく戦争をしていた。

戦争遺跡

戦争遺跡

  • 作者:中谷 航太郎
  • 出版社:ミリオン出版
  • 発売日: 2013-06-21

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